こんにちは!ハマカナです。
一級建築士はゼネコン社員ならずとも、建築業界に携わるものであれば、取得しておいて損はない資格です。むしろ、給料や評価が上がったり、転職に有利であったりと得ばかりの資格です。
その一級建築士について資格を取得する場合、以前の建築士法改正(2008年11月28日)時点では下記の通りとなります。簡単にポイントを纏めると、学歴要件を満たし、かつ実務経験2年以上でないと試験を受けることができません。
上記図を説明させて頂きます。
学部卒については、【学歴】及び【会社に勤め2年の実務経験】が受験要件でした。
院卒については、【学歴】及び【大学在学中のインターンシップ及びインターンシップに関連する科目の単位を修得したもの】もしくは【会社に勤め2年の実務経験】が受験要件でした。インターンシップとは、いわゆる建築士事務所等で行う実務実習の事です。この受験要件は、かなりハードルが高いです。ほとんどの人が、後者の【会社に勤め2年の実務経験】を選んでいました。
実はこの2008年の改正前は、【大学院における研究が建築に関するものであると認められるもの】となっていましたので、かなりの人は在学中に勉強をして、卒業し会社に勤めだした1年目に受験をしていました。
これでは、一級建築士の資格取得までにかなりの年月を要することになります。(相関性は微妙ですが、受験者数も減少傾向にあります。)これからも一級建築士の知識を持ったものが必要になる昨今、早くから資格所得を促すために、今回制度が改正される動きとなります。
この記事は、その改正の内容について解説をしたいと思います。結論は次の章の冒頭に記載しますが、詳細をご覧になりたい方は、そのまま記事を読み進めて頂ければ幸いです。
改正建築士法の公布内容について解説
2018年12月14日の建築士試験の受験資格を見直す改正建築士法が公布された内容については、以下の通りとなります。
簡単に言ってしまうと、学歴要件さえ満たせば、すぐに試験が可能になるということです。実務経験はどこに効いてくるかというと、免許を登録する時になります。大学院卒にとっては、インターンシップが無理難題だった以上、資格取得までかなりの時間短縮が見込めます。
この改正については、2年以内に施行予定となっておりますので、【早ければ2020年から適用】されることとなります。
それでは下記より、改正に至ったポイントや改正によるメリット、デメリットを記載します。改正内容がもうわかったという方は、下記までご確認して頂く必要はないかと思います。
改正に至ったポイント
改正に至った背景や必要性は、【一級建築士試験の受験者数の急減に加え、受験者の高齢化が顕著である】ということと、【業務を行っている建築士の高齢化が進んでおり、このままの傾向が続く場合、建築物の安全性の確保等において重要な役割を担う建築士人材の確保が困難】であることになります。下記の円グラフをご覧ください。
40歳未満(20代と30代)が約1割程度で、40歳以上が約9割を占めていることが分かるかと思います。会社でバリバリ働く40歳未満の社員の一級建築士の割合が、1割程度とは、かなりの驚きではないでしょうか。このままでは、建築士の高齢化により、1級建築士の総人口は少なくなる懸念があります。
その点で言えば、確かに若いうちから資格を所得できるような制度に改正することは、単純ですが理論的にはあっていると言えるでしょう。ただ、以下のようなメリット・デメリットがあると私は考えます。
改正によるメリット
改正によるメリットは下記の通りとなります。
- 大学在学中に勉強ができる
- 大学院在学中に合格できる
大学在学中に勉強ができる
志が高い学生にとっては、かなりのメリットになるかと思います。
私が一級建築士を取得した時は、働きながら資格学校に通い勉強をしていました。今考えれば、かなりの苦行です。平日は、21時くらいに退社し、22時ごろから2時間弱勉強していました。また、休日は資格学校で過ごし、家に帰ってからも復習をしていました。
それが大学の比較的時間がある時に実施できるのです。(私は大学位遊びたいと思いますが。。)
大学院在学中に合格できる
大学院まで進む学生の方は、学部卒の方と比べ、建築業界へ就職する意欲は強いです。その方たちが、大学院在学中に試験が可能となれば、躍起となって合格する為に勉強をすると思います。
従って、このメリットについては実現性があると思っています。なにより大学院在学中に合格してしまえば、【就職にかなり有利】になりますし。
改正によるデメリット
改正によるデメリットは下記の通りとなります。
- 実務イメージの伴わない試験になるので、合格しても頭でっかちになる可能性が高い
- 資格勉強代が相当に掛かる可能性あり
- 大学は大学で割り切る学生にとってはメリットはない
実務イメージの伴わない試験になるので、合格しても頭でっかちになる可能性が高い
これはかなり実現性の高いデメリットかと考えます。一級建築士の試験というものは、もちろん座学の勉強だけによってクリアできる試験ですが、実務イメージがないと、せっかく座学で勉強したことが実務との連携が取れない為に、実務に活かすことができなくなります。
よって、応用が利かない知識になる可能性が高く、最悪の場合記憶に定着せず、無駄な勉強になる可能性があります。
技術は後付けとの発想で、このような改正をされたかと思いますが、やはり実務経験がある状態で試験を受けたほうが、【1級建築士の質】は上がると思っています。
資格勉強代が相当に掛かる可能性あり
1級建築士試験は、1次試験(マークシート方式)と2次試験(製図・記述方式)に分かれています。実際、1次試験は、独学でも合格される方はいます。(私の体感ですが、全体の2,3割程度)ですが、独学で合格された方でも、2次試験は資格学校に通うという方がほとんどでした。
先ほども記載しましたが、実務イメージが伴わない試験となる為、【資格勉強の知識(部隊)のみで戦うこととなります。】【実務知識の援軍はありません】これがかなり危険です。実務知識の援軍がないと、応用が利かないのです。資格勉強の知識から少し外れた問題が出てしまった場合、混乱をする可能性があります。
資格勉強の知識がズバリ的中すれば、合格するかと思いますが、やはり実務知識がないと、不合格になる可能性があります。そうすると、資格学校に再度通ったりする必要ができ、費用が相当に掛かります。
大学は大学で割り切る学生にとってはメリットがない
たぶん私はこうなるなと思って記載しますが、大学でめちゃくちゃ勉強はしたくないです。私は学部卒ですが、まず勉強をするというモチベーションにならないかなと思っています。(大学院に進学する方はモチベーションは高いかと思いますが)
しかもお金もないですから、資格学校に行くこともできないですし。結局入社して、お金の目途ができ、資格学校に1年通い、2年目に受験が関の山かと思います。よって、従来より1年の短縮となります。あまりメリットが感じられないと思います。それがデメリットです。
まとめ
私はこの改正においては、少し疑問が残りました。【若手の1級建築士が少ないから、もっと早くから受験をさせよう】という単純な理屈であるからです。(他にも理由があれば大変申し訳ございません)
デメリットでも記載しましたが、実務が伴わない試験では、1級建築士の質が下がってしまうと感じます。とりあえず資格ホルダーを増やすのでなく、1級建築士に見合う能力があれば、みなし1級建築士にするだとかの制度があった方が良いかと感じます。
私の周りにもいます。1級建築士としての能力はあるのに、資格を持っていない人が。
とはいえ、すでに公布された改正であるので、その情報を早くつかみ、早く行動をする人が得をします。デメリットばかりではありませんので、うまくこの改正を利用してみてはいかがでしょうか。
長い記事でしたが、ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。