若手ゼネコン設備担当が身につけておくべき安全知識とは?

こんにちは!ハマカナです。

別記事で若手ゼネコン設備施工担当が安全の知識を学ぶメリットについては説明させて頂きました。

メリットについて簡単に要約すると、建築業界では安全の優先度が高く、知識があると人の命を守れるということです。

青年A
とはいっても、安全関連では覚えることが沢山あるので、どこから手を付けて良いかわからない。

ハマカナ
了解。それでは、よく使われる安全の知識について解説をしていきます。

確かに、安全の知識と呼ばれても、幅広く存在する為、今回はゼネコン設備施工担当として働いた経験から、特に使用する安全の知識についてご紹介したいと思います。

若手ゼネコン設備担当が覚えておくべき安全知識とは

覚えておくべき安全知識は、大きく分けて7つあります。

  • 高所作業の基準は2m以上
  • 玉掛けワイヤーの選定基準
  • 2丁掛け安全帯の使用基準
  • 保護具着用の基準
  • 開口部はすぐに塞ぐ
  • 作業主任者が必要な作業
  • 検電器の使用徹底

以上となります。詳細は以下で解説したいと思いますが、これらの安全知識の根拠としては、労働安全衛生法以下施工令や規則がベースとなります。

労働安全衛生法とは法律となり、労働災害防止のために守るべき内容が規定されています。その法律を詳しく説明したものが、政令であり、そこから更に詳しく説明したものが省令となります。更に細かい規定を設定する時は告示を使用します。以下が労働安全衛生法の体系となります。

法律 政令 省令
労働安全衛生法 労働安全衛生法施工令 労働安全衛生規則
ボイラー及び圧力容器安全規則
クレーン等安全規則
ゴンドラ安全規則
有機溶剤中毒予防規則
鉛中毒予防規則
四アルキル鉛中毒予防規則
特定化学物質障害予防規則
高気圧作業安全衛生規則
電離放射線障害防止規則
酸素欠乏症等防止規則
事務所衛生基準規則
粉じん障害防止規則
石綿障害予防規則
機械等検定規則
労働安全コンサルタントお及び労働衛生コンサルタント規則

労働安全衛生に係わる規定は、法律や政令も合わせると、合計で18つもあります。ただし、建築業界のみで特化して考えると、主に【労働安全衛生法】【労働安全衛生法施工令】【労働安全衛生規則】【クレーン等安全規則】【ゴンドラ安全規則】【有機溶剤中毒予防規則】【酸素欠乏症等防止規則】【粉じん障害防止規則】【石綿障害予防規則】の9つは、長年ゼネコンを経験していればどこかで携わるかと思います。

それでは先ほど挙げた7つの事項について詳しく説明させて頂けれ場と思います。。

高所作業の基準は2m以上

いわゆる【高所作業】と呼ばれる高さは2m以上の床面で行う作業となります。以下が根拠の条文となります。

第五百十八条 事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。

 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

第五百十九条 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆おお い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。

2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

e-Gov(イーガブ)労働安全衛生規則より引用

この条文により、高さが2m以上の場所で作業をする場合は、墜落しないような安全施設を組み立ててから、作業をさせなさいと記載しています。安全施設は基本囲いをしなさいとありますが、どうしても囲いを設けることができないもしくは囲いを取る場合は、安全帯を使用させる等の、危険を防止するための措置を講じなさいとの事です。

あなたが現場を廻って周りを見てみると、2mって案外低いように思えます。2mなら落ちても・・・と思うかもしれませんが、法で規定されていますので、法違反にならないように安全施設を整備してあげてください。

ちなみに、私は安全帯を付けてぶら下がった経験があります。ぶら下がった状態でもかなり過酷です。(ハーネス安全帯であっても過酷です)できれば安全帯を使用しないでも良い安全施設を整備をして頂くことを心掛けて頂きたいと思います。

その安全帯の体験の記事はこちらです。【必見!】ゼネコン社員に危険体感訓練が必須だと考える3つの理由

玉掛けワイヤーの選定基準

いわゆる【クレーンで重要物を吊る時のワイヤー】を玉掛けワイヤーと呼びます。その玉掛けワイヤーが破断したら、重量物が落下し、大事故につながる可能性があります。そんな大事故を起こさない為にも規定があります。以下が根拠の条文となります。

第八章 玉掛け 第一節 玉掛用具

(玉掛け用ワイヤロープの安全係数)

第二百十三条 事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるワイヤロープの安全係数については、六以上でなければ使用してはならない。

 前項の安全係数は、ワイヤロープの切断荷重の値を、当該ワイヤロープにかかる荷重の最大の値で除した値とする。

(玉掛け用フツク等の安全係数)

第二百十四条 事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具であるフツク又はシヤツクルの安全係数については、五以上でなければ使用してはならない。

2 前項の安全係数は、フツク又はシヤツクルの切断荷重の値を、それぞれ当該フツク又はシヤツクルにかかる荷重の最大の値で除した値とする。

e-Gov(イーガブ)クレーン等安全規則より引用

要は、ワイヤーやフック、シャックル等の重量物を吊る用具については、その吊る限界の重量の5,6倍は余裕を見なさいとの事です。簡単に言うと、100Kgの重量物を吊る時は、約600Kg吊っても破断しない吊り用具を使いなさいということです。

特に職人さんは、感覚で玉掛けワイヤーの選定をすることが多いです。そうではなくきちんと計算をし、安全な玉掛けワイヤーを使用させるようにしてください。またワイヤーの目視点検も行い、ほつれ等が無い事も確認させることも重要です。

職人さんの言いなりではダメです。きちんと自分の知識で指示をしてあげてください。

2丁掛け安全帯の使用基準

2丁掛け安全帯については、現在のところ義務ではなく推奨となっております。(厚生労働省業務委託の建設労働災害防止協会にも【積極的に使用しましょう】と記載あり)ではどんな時に2丁掛け安全帯が必要なのでしょう。下記の図をご覧ください。

上図は、鳶工さんが鉄骨組建て工事を行っている時に、絶対に起こり得る事象です。鳶さんは鉄骨上を移動します。上図のように鉄骨柱を跨いで移動する際に、親綱にかけていた安全帯を一度取り外して、次の親綱に掛ける必要があります。その安全帯を取り外した瞬間、モノの2,3秒ですが、安全帯がどこにも掛かっていない状態になります。

この数秒の安全帯が掛かっていない状態を撲滅するために、2丁掛け安全帯を使用することが有効であると考えられています。以下その有効性を表す図となります。

このように2丁掛け安全帯を使用すれば、安全帯を掛けていない瞬間がなくなります。

実際の現場では鳶工さんは確実に2丁掛け安全帯で、その他の業種においては上図のようなケースがある場合に2丁掛け安全帯をするように指示をしているゼネコンは多いです。

保護具着用の基準

保護具着用に関しては、それぞれの作業に対し、各規則ごとに規定があります。その中で特に覚えておいて頂きたい内容についてピックアップして説明をしたいと思います。

(呼吸用保護具の使用)

第二十七条 事業者は、別表第三に掲げる作業(次項に規定する作業を除く。)に労働者を従事させる場合(第七条第一項各号又は第二項各号に該当する場合を除く。)にあつては、当該作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具(別表第三第五号に掲げる作業に労働者を従事させる場合にあつては、送気マスク又は空気呼吸器に限る。)を使用させなければならない。ただし、粉じんの発生源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置、粉じんの発生源を湿潤な状態に保つための設備の設置等の措置であつて、当該作業に係る粉じんの発散を防止するために有効なものを講じたときは、この限りでない。

2 事業者は、別表第三第一号の二、第二号の二又は第三号の二に掲げる作業に労働者を従事させる場合(第七条第一項各号又は第二項各号に該当する場合を除く。)にあつては、当該作業に従事する労働者に電動ファン付き呼吸用保護具を使用させなければならない。

3 労働者は、第七条、第八条、第九条第一項、第二十四条第二項ただし書及び前二項の規定により呼吸用保護具の使用を命じられたときは、当該呼吸用保護具を使用しなければならない。

e-Gov(イーガブ)粉じん障害防止規則より引用

こちらは粉じん障害防止規則に規定されている内容ですが、要は【粉じんが発生する作業の時は保護具を着用しなければならない】と記載されています。

若手ゼネコン設備施工担当が、よく立ち会う機会が多いのは、配管の切断や斫りの作業です。これらの作業を行う場合、粉じんが発生します。ただ、職人さんによってはめんどくさいし、健康面として問題ない(と思っているだけ)から、保護具は付けないと言ってくる人もいます。

その点は、きちんと根拠をもって、説明しましょう。記憶にあるかどうか分かりませんが、アスベストについても、健康面は問題ないと思っていても、何年か後には命の危険があるものとして認識されました。職人さんを守るためにも、きちんと着用させましょう。

開口部はすぐに塞ぐ

高所作業の基準は2m以上でも記載した通り、労働安全衛生規則519条では、開口部がある場合、適切に囲い等を設けると規定があります。

ゼネコン設備施工担当が頻繁、かつ注意しておかなければいけないのは、コンクリート床に【スリーブという配管や空調ダクトを通すための穴】を設けるときです。

配管であれば、小さくて50φ程度、大きくて500φ程度と様々です。ダクト開口であれば、1,000mm×1,000mmというものも一般的にあります。配管程度の小さい穴であれば、足をくじくだけで終わるかもしれませんが、ダクト開口などの大きい穴は落下し、命の危険があることも多くあります。実際何件も命を落とす事例はあります。

原則は安全な現場にしなくてはいけませんので、<ゼネコン設備施工担当は、床のコンクリート打設を行った次の日には、床の開口部の養生の為に、鉄板の蓋や木板(極力厚い木材)を穴に被せるようにサブコンに指示をしましょう。養生の方法は様々ですが、止水も考えた方法もフロアによって考えなくてはいけない時もありますので、現場ごとに安全かつ効率的な養生方法を考えましょう。

作業主任者が必要な作業

作業主任者が必要な作業とは、簡単に言うと【危険が伴う作業なので、知識のある人間が指揮をする必要がある作業】の事を指します。以下は労働安全衛生法からの抜粋となります。

(作業主任者)

第十四条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。 (統括安全衛生責任者)

e-Gov(イーガブ)労働安全衛生法より引用

細かい内容は、労働安全衛生施工令や規則などに記載がありますが、今回ゼネコン設備施工担当のみならずゼネコン建築担当が管理する作業主任者が必要な作業について説明をします。建築担当についても記載する理由は、建築担当でも作業主任者を立てる必要がある作業を理解していない人が多いので、ぜひ設備担当が建築担当に指摘してあげられるようにとの思いを込めて記載します。なお以下の表は、労働安全衛生法及び労働安全衛生法施工令に記載されている内容を、わかりやすく表にしたモノになります。

■作業主任者が必要な作業(ゼネコン現場担当に特化)

作業主任者名称 該当法令 該当する作業内容
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者 安規則359,374 掘削面の高さが2m以上の地山の掘削の作業。土止め支保工の切りばり、腹おこしの取付又は取り外しの作業
型枠支保工組立て等作業主任者 安規則246 型枠の組立て、解体の作業
足場の組立て等作業主任者 安規則565 吊り足場、張出足場又は高さが5m以上の足場の組立、解体、変更の作業(ゴンドラの吊り足場は除く)
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者 安規則517の4 建築物の骨組み又は塔であって、金属製の部材により構成される5m以上の組立て、解体又は変更の作業
酸素欠乏危険作業主任者 酸欠11 酸素欠乏危険場所における作業
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者 酸欠11

酸素欠乏症及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所における作業

有機溶剤作業主任者 有機19 施工令第6条第22号(詳細は下に記載)に掲げる有機溶剤の製造又は取扱
石綿作業主任者 石綿19 石綿もしくは石綿をその重量0.1%を超えて含有する製剤その他の物を取扱う作業、試験研究のため製造する作業、石綿分析用試料等を製造する作業

石綿作業主任者以外については、新築工事であればだれもが経験する工事となりますので、全て覚えてください。石綿作業主任者についても、改修作業であればほとんどの方が経験する工事となります。工事を管理する都合上、酸素欠乏危険作業主任者や石綿作業主任者は、ゼネコン現場担当も持っておくべきだと私は考えます。

また有機溶剤作業主任者において、該当する作業が上記表には書ききれなかったので、下に記載します。

第六条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

二十二 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤(当該有機溶剤と当該有機溶剤以外の物との混合物で、当該有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するものを含む。第二十一条第十号及び第二十二条第一項第六号において同じ。)を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるものに係る作業

e-Gov(イーガブ)労働安全衛生法施工令より引用

検電器の使用徹底

電気が流れてないと思い、配線がむき出しなったケーブルと接触し命を落としたという事例はよくあります。

実は、検電器を使用しなさいとの法律は、以下の条文だけで、低圧(電圧600V以下)に関しては、特に明記されておりません。

第三百三十九条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。 

三 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること。

ただし、尊い命を落としている事例もあるので、必ず低圧回路についても、検電器による停電確認は実施しましょう。少しの作業で守れる命があるなら、その作業は省かず惜しまず実施しましょう。

まとめ

安全の知識については若手のうちから戦力となり、かつ人の命も守ることができます。ぜひ、以上の知識は最低限覚えて頂ければ幸いです。

長い記事でしたが、ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。このほかにも、ゼネコンや設備施工、ゴルフに関する記事もございますので、ぜひご覧いただけると幸いです。