こんにちは!ハマカナです。
ゼネコン設備担当であれば、スリーブ取付工事は若手のうちから携わる工事であり、比較的若手が担当する工事もあります。
スリーブ取付工事の役割は下記の通りとなっております。
○躯体に構造的に問題のない【穴】をあけて、仕上げ工事の際に配管・配線・ダクト・ケーブルラックを通せるようにする工事である。
躯体とは、主にコンクリートを指しますが、もちろん鉄骨も該当します。余談ですが、躯体がコンクリートであれば、どんなに遅くなってもコンクリート打設前にスリーブを取り付ければ、穴はあきます。ですが鉄骨であると、鉄骨製作図が承認される前に、スリーブの位置を決めておかないといけません。鉄骨の製作図とは、工事の初期段階で作図・承認されますので、スリーブ位置を決めるのも工事の初期段階で決めなくてはいけません。
これがかなりの重労働となります。
仮にスリーブの位置を決めるのが間に合わなくて、鉄骨が建てられた後に穴をあけることは、不可能ではありません。ですが、冒頭にスリーブ取付工事の役割でも記載しましたが、後から【構造的に問題のない穴】をあけるとなると、相当な検討と相当なコストがかかります。
よって構造種別を確認し躯体が何になるのか確認し、なおかつ工程を把握して、いつまでにスリーブ位置を決めればよいのか当たりをつけておくことが大事です。
今回の記事では、スリーブ位置が決まっていることが前提として、実際にスリーブを取り付けるときの重要なポイントについて、私の実体験から記載させていただければと思います。よろしければご覧いただけると幸いです。
スリーブ取付工事現場管理での重要な8つのポイント
これよりスリーブ取付工事の際の重要なポイントについて記載させていただきます。
大前提として、設備業者から反感はあるかと思いますが、スリーブについては、鉄筋工や型枠工、コンクリート打設関連業者からすると、非常に邪魔なものです。それを前提に謙虚な気持ちで取付工事をするとよいと思います。
それこそ20年前であれば、スリーブを取り付けるために、サブコン担当者はビール券などを用意し、鉄筋工や型枠工に配っていたという噂をよく聴きます。ただ今でも昔の職人さんでそのような考えを持っている人も少なからずいます。
よって少し悔しいかもしれませんが、謙虚な気持ちで臨みましょう。
それでは重要なポイントについて記載いたします。
重要な8つのポイント
スリーブ取付工事の重要なポイントとして、大きく8つあります。
重要なポイント
躯体の場所によって使い分けが必要なスリーブ使用材料を理解する。
スリーブ取付場所の補強方法を構造設計に確認する。
スリーブ取付位置は図面で鉄筋・型枠業者に渡す。
スリーブ取付のタイミングをあらかじめ調整する。
補強工事は鉄筋工事業者の見積もりに入っているか確認する。
コンクリート打設時の合番は必ず付く。
床スリーブは、コンクリート打設後すぐに養生蓋を設置する。
それでは順番に説明させていただければと思います。
構造上問題のないスリーブ取付位置・大きさを理解する
構造上問題のないスリーブ取付位置については、基本的には【構造図】に記載されています。
ただ、ダイヤレンやウェブレンなどの既製品の開口補強金物を使用すると、構造上問題のないスリーブ取付位置については、その開口補強金物のメーカーの基準に従うことになります。
メーカーよりその基準を取り寄せ、構造設計者に承認をもらいましょう。一般的には既製品の開口補強金物を使用すると、スリーブ取付位置が緩和され、スリーブ同士の位置がより近くてもよくなり、スリーブ大きさが大きくなっても良いことがあります。
どうしてもスリーブをたくさんあけたい場合などは、コストとも調整になりますが、既製品の開口補強金物を使用するのも良いかと思います。(簡単に取り付けることもできるため、コストが高くても手間賃が下がるため、採用されるケースが多いです。)
躯体の場所によって使い分けが必要なスリーブ使用材料を理解する
意外に知らない人がいますが、紙製のスリーブについては、使用場所が限定されています。以下は、【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)】の抜粋となります。
2.2.27スリーブ
(b)(2)柱及び梁以外の箇所で、開口補強が不要であり、かつ、スリーブ径が200mm以下の部分は、紙製仮枠としてよい。紙製仮枠を用いる場合は、変形防止の措置を講じ、かつ, 配管施工前に仮枠を必ず取り除く。
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)より
また同仕様書には、外壁の地中部分で水密を要する部分のスリーブは、つば付き鋼管とし、地中部分で水密を要しない部分のスリーブはビニル管とする、とも記載があります。この内容については、ほとんどの方が一般的にご存じかと思いますが、公共建築工事標準仕様書には明確に記載されています。
そしてスリーブの材質についても以下のように記載されております。
材料 | 仕様 |
---|---|
亜鉛鉄板製 | 径が200㎜以下のものは厚さ0.4mm以上、径が200mmを超えるもの(上限が350mm)は厚さ0.6mm以上で、原則として、筒形の両端を外側に折り曲げてつばを設ける。また、必要に応じて、円筒部を両方から差し込む伸縮型とする。 |
つば付き鋼管製 | JISG3452(配管用炭素鋼鋼管)の黒管に、厚さ6.0mm以上、つば幅50mm以上の鋼板を溶接後、汚れ、油類を除去し、内面及び端面にさび止め塗料塗りしたものとする。 |
ここまでいろいろと記載しましたが、これらの基準はあくまでも【公共工事】の標準仕様書となります。特に地中部分で水密を要する部分のスリーブは、塩ビ管(VU)にスパンシールを巻いて処理をすることが一般的です。
従って公共建築工事標準仕様書で基本は抑えつつも、その基本の意味を理解し、同等以上の仕様であれば、もちろん代替を使用することは問題ないかと思います。
スリーブ取付場所の補強方法を構造設計に確認する
一般的な補強方法については、【構造図】に記載されているので、基本的にはその構造図に従って補強をすれば問題ありません。
ですが、スリーブ開口が密集していたり、スリーブ開口が大きすぎたりすると、一般的な補強方法では事足りなくなります。また、構造設計者とは、建物全体の構造を把握しているので、どこが構造的にウィークポイントであるのか把握しております。
よって、スリーブ取付場所の図面(一般的にはスリーブ図)が作成できたら、要所で展開図なども記載し、構造設計者に提出しましょう。
そうすると構造設計者は、その図面に手書きで補強方法などを記載してくれたり、はたまた構造図の補強方法による、などのコメントを記載してくれます。
そのコメント付きで返却された図面をもって、現地でスリーブ取付を実施しましょう。
スリーブ取付位置は図面で鉄筋・型枠業者に渡す
先ほどの構造設計者に補強方法などがコメントバックされた図面を、建築担当経由で構いませんので、鉄筋・型枠業者に渡しましょう。
特に鉄筋業者は、その図面を見て、補強用の鉄筋の発注をします。したがって、かなり早めに渡すと、鉄筋業者からは喜ばれます。
逆に渡さないでいると、鉄筋業者から【自分で補強しろ!】と言われることがあります。
必ず構造設計者から返却された図面を、早めに、確実に渡すようにしましょう。
スリーブ取付のタイミングをあらかじめ調整する
スリーブ取付のタイミングとは、配筋する前か後の2択となります。8:2の割合で、後に取り付けることが多いです。
理由は、【配筋作業の時にスリーブがあると邪魔】【配筋作業の時にスリーブを破損する恐れがある】からです。ただ、鉄筋業者もどこにスリーブがあるのか知りたいので、手順としては、型枠⇒スリーブ位置墨出し⇒配筋(補強も併せて)⇒スリーブ取付⇒コンクリート打設となります。
スリーブ取付のタイミングとして平和なのは、配筋後となりますので、調整するときは【配筋後】を選ぶとよいです。
補強工事は鉄筋工事業者の見積もりに入っているか確認する
ここまで、平然と鉄筋業者が補強をすると記載しておりますが、時たま鉄筋業者の見積もり内に補強工事が抜けていることがあります。
当然抜けている場合は、だれが実施するかという議論になりますが、それは鉄筋業者にやってもらいましょう。補強とはいえ、重要な構造体の配筋作業になるので、それはプロにやってもらったほうが良いです。
ただし、補強工事がウェブレンやダイヤレンなどの既製品を使用する場合は、取付は設備で実施することが多いです。なぜならスリーブを取り付けるタイミングで、その流れでウェブレンやダイヤレンを取り付けたほうが効率が良いからです。しかも取付方法も簡単なので、十中八九設備業者に取付を任されます。
コンクリート打設時の合番は必ず付く
これも慣例的になっていると思いますが、必ず合番には付いたほうが良いと考えます。理由は、スリーブがずり落ちないか、スリーブが蹴られて取れてしまわないか確認する為です。コンクリート打設は時間との勝負でもありますので、あまりスリーブが目に入らなくなり、蹴られてしまうことがあります。
また壁内に大きな箱スリーブを入れている場合は、合番者が必ず【この場所に大きなスリーブがあるので、下部は入念にたたいてください】というように指示してください。大きなスリーブがあると、コンクリートが回り込まず、スリーブ下が大きなジャンカになることが多々あります。
この件についての一番良い対策としては、型枠にスリーブの位置が分かるようにマーキングしておくのが良いです。ただし型枠業者は型枠を転用するため、【テープでマーキングしろ!】という可能性があります。必ずマーキングする際には、建築担当を通して型枠業者にも伝えるようにしましょう。
この業界、【勝手にやった】が一番まずいので、根回しを確実に行いましょう。
床スリーブは、コンクリート打設後すぐに養生蓋を設置する
これも意外に忘れがちな内容となります。床スリーブについては、コンクリート打設後は危険な開口部となります。
よってその開口部を養生するのは、安全上必要になります。ただ、その養生蓋も、既製品などを使用したりするケースがありますので、事前に発注をかけておかなければなりません。
その発注を忘れてしまうケースが多々あります。
よって床にスリーブを取り付けることが決まった段階で、養生蓋を発注しておくと、忘れることがなく、コンクリート打設後に適切に開口部養生ができます。
まとめ
スリーブ取付工事は、どの現場でも発生する工事内容ですが、ベテランでも意外に上記の7つの重要なポイントをスムーズにやり遂げている人は少ないと思います。
よって、もし若手の方でこの記事をご覧になっているのであれば、上司をフォローするような形で、この7つのポイントを実施してあげてください。
ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。この記事の他にもゼネコンや設備担当、ゴルフ等に関する記事もありますので、併せてお読み頂けると幸いです。
スリーブ工事と同時期に施工する【インサート工事】についてご紹介した記事もございますので、併せてお読みいただけると幸いです。
・インサート工事を実施するにあたり、現場目線から重要なポイントを紹介しています。スリーブ工事と同時期の施工なので、ぜひ合わせて確認しておきたい!
幅広い知識取得のためチェック!