【ゼネコンの人手不足解消?】外国人受入の特定技能制度とは

こんにちは!ハマカナです。

ゼネコンに勤められている方であれば、外国人労働者を見かけるのは、あまり珍しくないことは認識されているかと思います。

それもそのはず、下記の2019年5月に掲載の日経アーキテクチュア内の記事をご覧ください。

日経アーキテクチュア(2019年5月掲載)より引用

まずは1997年から2014年にかけて、建設技能者の人口は下降トレンドとなっていることが、はっきりと目に見えてわかるかと思います。一方で、建設投資額は東京五輪やカジノ、大阪万博などで当分は据え置きになると予想すると、【建設技能者は減るが、建設工事は減らない】ということになります。

もしその状態になると、大きく分けて2つの対策が取られることになります。

  1. 建設工事の生産性を向上させる
  2. 建設技能者を増やす

①については、ロボットの活用や、新工法の開発などによって実現される内容になります。これは、【各企業が数社で協力すれば、達成できる内容】となります。実際ロボットについては、鉄筋の結束や柱の溶接で活用されていたりします。

ただし②については、各企業が数社で協力して達成できるレベルではないです。抜本的な改革が必要な内容となります。

今回の記事において、この抜本的な改革として、政府はどのような事を実施したのかを記載していきたいと思います。

外国人受入の新制度とは

外国人受入れの新制度の説明に入る前に、外国人を建設業界に受け入れる制度関係の整理をしたいと思います。その後新制度の説明をさせて頂ければと思います。

外国人受入制度の変遷

まず政府は、「建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置」(平成26年4月関係閣僚会議で取りまとめ)においては、五輪の関連施設整備等による当面の一時的な建設需要の増大への【緊急かつ時限的措置(2020年度で終了を現在では延長して2022年としている)】として、外国人材の活用促進を図ると考えていました。

外国人技能実習制度を設立

そのような考えがあったため、外国人技能実習制度(※1)より外国人材も技能実習生として受け入れて、建設需要への対応を行っていました。

■※1外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度は、わが国で培われた技能、技術又は地意識を開発途上地域等へ移転することによって当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として1993年に創設された制度です。2017年11月、「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、外国人技能実習機構が設立され新たな技能実習制度がスタートしました。

公益財団法人 国際研修協力機構(JITCO)発行「建設と外国人技能実習生」より引用

外国人技能実習制度に基づき、技能実習生の入国から帰国までの流れは下記の図の通りとなります。 この図で見てもらえるとお分かり頂ける通り、【技術や技能を持ち帰り、最終的には帰国する】事となります。要は労働力としてではなく、あくまでも【人づくりをして国際協力をする】といった主旨となっています。

公益財団法人 国際研修協力機構(JITCO)発行「建設と外国人技能実習生」より引用

技能実習制度の主旨では対応できない予測となる

ただし事態は深刻となっています。以下は建設業就業者のグラフとなります。

国土交通省 「建設産業の現状と課題」より引用

△マークが全産業の就業者割合で、□マークが建設業の就業者割合となります。このグラフから分かることは、全産業と比べ【建設業には高齢者が多くいる】【建設業には若手がいない】事がわかります。

何が深刻かというと、若手が全く建設業に就業しなくなるとともに、数年後高齢者が辞めてしまうと、建設業は重大な人手不足に陥ります。そうなると、やはり外国人材を確保することは必然になっていきます。

こうして外国人材を確保する必要があるとの認識となりましたが、今のままでは、外国人技能実習制度によりいずれは母国に帰ってしまう現状があります。さらに技能実習はあくまでも【人づくり】を目的としている為、厳密に言うと【労働力の底上げ】という枠組みの中には入りません。

技能実習と平行で特定技能制度を設立

そこで政府は、【特定技能】という制度を定め、技能実習の枠組みでは果たせなかった【労働力の底上げ】を図ることにしております。特定技能とは人づくりが主目的ではなく【外国人労働者】として在留資格を与えますとの制度となります。

以下は国土交通省が発行している特定技能に関する説明用の図となります。図左の現行と書かれたエリアは、技能実習制度に基づく外国人材の国内で働ける期限のフローとなります。見て頂くと、最終的には【在留不可】という状態になり帰国を余儀なくされます。

一方図右については、特定技能制度に基づく外国人材の国内で働ける期限のフローとなります。見て頂きたいのは、技能実習という名目で労働する必要がないことと、最終的には在留期限の制限なしということです。

このような特定技能制度を設けることによって、建設業界の人手不足を解消するような取り組みを、公には2019年4月1日よりスタートをしています。この制度を適正かつ円滑に取り組ませるために、国土交通省は一般社団法人の「建設技能人材機構(JAC)」を設立しました。

2019年3月国土交通省資料より引用

JACとは外国人受入れの為のプラットフォーム

政府が公に抜本的な事を行う為には、やはりプラットフォームを設置し、ベクトルを集約する必要があります。そのプラットフォーム機能を持ったものが、先ほど記載した建設技能人材機構(JAC)となります。

建設技能人材機構(JAC)は平成31年4月1日に設立されています。またJACの設立に伴い、改正出入国管理法が2019年4月1日に施工されております。

このプラットフォーム機能により、特定技能外国人を適正に受け入れ、建設業界の人手不足を円滑に解決させていく仕組みの構築が可能となっています。それでは、JACは具体的にはどのような事を行うのでしょうか。次で説明致します。

JACと関係機関との業務連関とは

JACの命題としては、JACの事業計画書を引用すると下記の通りとなります。

本機構は、建設業者団体等が協力して、建設分野における特定技能外国人その他の外国人材の適正かつ円滑な受入れ等に関する事業を行うとともに、建設技能者の技能評価その他の建設技術者の確保等に関する事業を行うことにより、建設分野における人材の確保を図り、もって我が国の建設業の健全な発展に資することを目的とする団体である。

一般社団法人建設技能人材機構 平成31年度事業計画書より引用

この命題の基、国土交通省は2024年3月末までの期間で、約4万人を上限に特定技能外国人を受け入れる考えとのことです。

それでは具体的に、この命題をどのように運営して達成していくかというと、下記の図となります。こちらは国土交通省の資料となります。

2019年3月国土交通省資料を引用

図下の【元請企業がゼネコン】として考えると、【受入企業は専門工事業者】となります。特定技能外国人の受入を希望する企業は、まず事前に受け入れ計画を作成し、国土交通大臣による審査・認定を受ける必要があります。また審査を受ける為にはJACの正会員であるか、賛助会員であることが前提となります。既に4月1日の設立時で、日本型枠工事業協会や日本鉄筋工事業協会、日本建設業連合会など、計20団体が正会員となったとの事です。

後は関係各所と連携し、特定技能外国人を集め、その受入企業と雇用契約を結び、現場で働く流れとなります。

JACは2019年4月1日に設立しているので、まだ日は浅いです。この図のフローを基に、PDCAを繰り返し、数年後には軌道に乗ってくるかと思っています。そして、JACの命題である、外国人の人材の確保を達成してくれると思います。

まとめ

特定技能外国人を確保しようという動きは以前からございましたが、実際に目に見えて行動しだしたのは、つい最近の事です。

以上の記事のように、政府がメインとなって動いていることにより、各企業も動かざるおえない状況になり、数年後には浸透し、外国人労働者の確保ができる事と思います。

ただ、机上の空論で終わる可能性も0ではありませんので、人材の確保だけでなく、生産性向上についても並行で進めていく必要があります。

働き方改革でも大きく動いている建設業界、これからも注目が集まりますね。

ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。この記事の他にもゼネコンや設備担当、ゴルフ等に関する記事もありますので、併せてお読み頂けると幸いです