【知れば面白いVE案】天井裏感知器を煙感知器に

こんにちは!ハマカナです。

VEとは、Value Engineeringの略称です。

VEを実施することによって、機能を劣化させることなく、コストを下げることができ、ゼネコンが利益を上げるためにも、必須の取り組み内容となります。

従って、ゼネコン担当であれば、必ずどの現場でも、VEの実施は不可欠となります。ただし、自分でVEを考え出すには、相当の経験と知識が必要となります。

経験と知識がない人にとって、【VE案を考えろ!】と言われると、まず自分の力で考えだすのは不可能に近いです。ただしゼネコン設備担当者であれば、身近な人の力を借りれば、容易にVE案を作成することが可能です。

それはサブコンの方々です。

サブコンの力を借りてしまえば一番手っ取り早くVE案を作成することでき、それなりのVEを実施できるかと思います。

ただし、毎回サブコンの力を借りていては、サブコンの能力によってVE案のクオリティにばらつきが出てしまい、いわば運頼りになってしまうことになります。

そして一番の弊害は、自分の成長が止まってしまうことです。

今回の記事では、自分でVE案を考え出せるようになるヒントとなる、ある現場でのVE案を掲載します。

この記事を参考にして、自分でVE案を考え出すようにする経験をすれば、きっとその経験はあなたの成長につながると思います。

また経験や知識がある方も、復習がてらご確認頂けると、もしかすると新たな発見があるかもしれません。よろしければご覧いただけると幸いです。

ここまでのポイント
○VEの実施によりゼネコンが利益を上げれる。
○ゼネコン担当であれば必ずどの現場でもVEの実施は不可欠。
○今回の記事はVE案のヒントを記載する。

VEとは

これより天井裏感知器を煙感知器にするVE案について記載させていただきます。

今回の記事では、イニシャルコストのみならず、ランニングコストも削減できる内容になります。

(点検手間という意味で)

ちなみにVEという言葉は、世界大百科事典第2版に下記のように定義されています。

価値分析は、最低の総コストで必要な機能を確実に達成するため、製品とかサービスの機能分析に注ぐ組織的な努力であると定義されている。価値分析はVA(value analysis)ともVE(value engineering)とも略称されるが今日では後者を用いることが多い。顧客は価値ある製品やサービスを求めている。VEでいう価値とは、製品とかサービスを利用する顧客側が判断するものであり、したがって企業側としては顧客の立場にたって価値改善をはかるよう努力することになる。

世界大百科事典 第2版より引用

要するに、VEの価値は、【顧客側が判断】するものなので、ゼネコン担当であればVE案を検討したら、基本的には建物を使用する発注者の確認が必要となります。

とはいえ発注者が毎回そのVEを判断することは少なく、監理者や設計者が判断することが多くなっております。

ただ、建物の使用勝手が変わるようなVE案は、発注者に確認することが必須なので、ケースバイケースで判断者が変わると認識しておいても良いかと思います。

判断者はケースバイケースかもしれませんが、VE案が採用されることによって、コストが減りますので、そのVE案が採用されたかは発注者に報告する必要があります。

よって、VE案を考えついただけでは足りず、根拠などを用意しきちんと説得できて初めて、VE案が活かされる為、説明する力も必要となります。

そのことを念頭に入れて頂き、下記のVE案についてご確認頂ければ幸いです。

天井裏感知器を煙感知器にする

一般的な建物の天井裏の感知器については、既に設計時点から

煙感知器とすることがほとんどかと思います。

現に私も煙感知器以外使用したことがありません。

ですが、工場などでは、空気管という熱感知器を使用していることが多くあります。

稀ですが、2022年時点で工場を新築する場合でも、天井裏感知器を空気管として

設計するところもあります。(実際にありました。)

空気管のメリットは、差動式熱感知器としては、下図の通り、高さ15m未満までを警戒することができます。

ホーチキ株式会社 資料編/感知器設置上のご注意より引用

従って、天井裏の懐が高く、大面積の工場などは空気管を使うことが多くありました。

また動作原理が空気の膨張によりダイヤフラムが作動し、接点を閉じることから

単純な構造で実績があり、良く使われていたという歴史もありました。

ただ空気管については、空気管本体に加えて、検出部を収納する収容箱が必要になり

それが室内の壁面に取りつくことになるので、室内に余計なスペースが生まれることになります。

加えて、多くのものを取り付けるので、施工費もかかりますし、故障した際の取り換えの

コストもかかります。

ホーチキさんの製品ですが、下図が空気管と呼ばれる差動式分布型感知器となります。

その時に代わりになるのが、煙感知器となります。

感知面積も広いこともあり、設置個数も少なくなるため、そもそものイニシャルコストも

安いですし、施工費も安くなります。

また、受信機かつ煙感知器を自動試験機能付きにすると、受信機で発報テストができるので

保全性の改善が特に大きいメリットになるところもございます。

よって新築でも更新でも、空気管などで計画している建物は、ぜひ一度煙感知器の設置を

検討の余地に入れていただけると、ランニングコストも削減でき保全性も向上する

VEになる可能性が高いです。

ただし、感知器については、室用途によって設置できる種類が変わりますので

その点はあらかじめ確認をしたうえで設置検討をお願いします。下図も参考ください。

ホーチキ株式会社 ホーチキのポケット設置基準書より引用

延べ床面積約6000m2の建物で、天井裏に空気管を計画していた際に、煙感知器へ変えた場合のイニシャルコストは約7,000千円を削減した実績もあります。

ここまでのポイント
〇天井裏の感知器を煙感知器にするとコスト低減のみならず保全性も向上する可能性ある。
〇感知器は室用途や高さによって設置できる種類が変わるので選定には注意が必要。
〇6000m2の建物で空気管⇒煙感知器で約7,000千円の削減実績あり。

補足:天井裏感知器を免除できる法的根拠

そもそも天井裏に感知器が必要な条件が、消防法に定められております。

詳しくは、消防法施行令第21条2項3号と消防法施行規則第23条4項1号ハに記載があります。

 自動火災報知設備の感知器は、総務省令で定めるところにより、天井又は壁の屋内に面する部分及び天井裏の部分(天井のない場合にあつては、屋根又は壁の屋内に面する部分)に、有効に火災の発生を感知することができるように設けること。ただし、主要構造部を耐火構造とした建築物にあつては、天井裏の部分に設けないことができる。

e-Gov法令検索 消防法施行令第21条2項3号より

上記は主要構造部を耐火構造とした建築物の場合は、天井裏の感知器は不要との記載になります。

続いては下記です。

 感知器は、次に掲げる部分以外の部分で、点検その他の維持管理ができる場所に設けること。

 天井裏で天井と上階の床との間の距離が〇・五メートル未満の場所

e-Gov法令検索 消防法施行規則第23条4項1号ハより

上記は天井裏のスペースが0.5m未満であれば、天井裏の感知器は不要との記載になります。

その他、天井裏以外でも感知器が不要の場所はありますが、詳しくは建築消防adviceに

わかりやすく掲載されており、また他者に説明する際のエビデンスとしても非常に有効

なっておりますので、ぜひ携帯されることをお薦めします。

ここまで色々と記載させて頂きましたが、最終的には所轄の消防の「消防同意」や「消防指導」が

上位の判断根拠となりますので、必ず確認をお願いします。

まとめ

VE案は、現場特有のものもあれば、どの現場でも使用できるものもあります。

VE案を検討するのは難しいかと思いますが、下記のことを考えると案が次々と出てくるものです。

①「それが、どのような根拠で」設計されているか。

 ⇒設計者は余裕を見る生き物です。

  その余裕が大きすぎないか、また適切なのか確認。

②「設計されたものが実際に使う人にとって適切なものか」を考える。

 ⇒設計者と使用者がシンクロ率100%になることは無理です。

  (設計者=使用者であれば可能ですが)

  ただ極力100%に近づけることで、無理無駄が見つけられ

  不要なものがなくなります。

③「それに代わるものはないか」を探す。

 ⇒照明器具1つをとっても、メーカーは多種多様です。

  パナソニックさんや東芝ライテックさんなど

  メーカーを変えるだけで、照明器具が安くなることがあります。

④「一緒にしたらどうか」を考える。

 ⇒集約する力は大きいです。

  ただし使い勝手などが下がる可能性があるので、検討が必要です。

⑤「それはいるのか」を考える。

 ⇒無駄なものは無駄です。皆様の中でも、1年以上使っていないものが

  引き出しの中にありませんか。

  あればそれは、そもそも最初から要らなかったものです。

⑥「場所を変えたらどうか」を考える。

 ⇒場所を変えるメリットは多くあります。

  例えば空調の室内機と室外機の位置を近くするだけで。

  冷媒管の長さが短くなり省コストとなります。

  さらに熱ロスも省エネになるので一石二鳥ですね。

今回記載したVE案は、上記の③に該当します。

代わりを探すにも、根拠が必要ですし、一番は法的根拠を見逃すと

取返しがつかなくなりますので、必ず根拠の確認は必要となります。

上記で紹介したVE案を抑えて頂き、あなたの経験の中で、さらなるVE案を考え出すようにすると、さらにゼネコン設備担当として成長をしていけるのではないかと思います。

ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。この記事の他にもゼネコンや設備担当、ゴルフ等に関する記事もありますので、併せてお読み頂けると幸いです。